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小妖精の唄

◆木霊の日記帳 春は近く幸せは足元に
「夜羽クン〜♪」
「ん? 何か用?」
「へへへ、呼んでみただけ〜」
「・・・なんだよ、ソレ」
「たーにあ君っ♪」
「木霊、どうかした?」
「ううん、別にぃ〜」
「・・・?」

まだまだ冷たい風の吹くこのごろ、木霊の頭には一足早く春が来ているようである。
にこにこと2人のピクシーを見ては笑み崩れるその姿は春爛漫というより、向こう側の世界からのお迎えが来ているようにも見えなくない。
良く言えば、朗らかな笑顔。 悪く言えば、だらしない笑顔。
それにはちゃんと理由がある。
夜羽と再会した直後、エターニアの居場所が、そしてメフィアの居場所までがぞくぞくと寄せられて来たからだ。

大急ぎでエターニアのことを迎えに行き、その足で今度はメフィアの元へと向かっている道中なのである。
ひょこひょこと踊るような酔っているような怪しげな足取りで歩いていくその周りを不安げな、若干気味悪げな面持ちで飛び回る2人の小妖精。
長い銀髪をなびかせているピクシー、光属性の夜羽が口を開いた。
「なぁ木霊ぁ。やっぱりいつも以上にヘンだぜ。何かあったのかよ」
「え? ふふふ、なーんにもないよ〜。夜羽クンもタニア君も一緒にいるから幸せなだけだもん♪」
「夜羽の言うとおりだと思う。今日の木霊は変だ」
陽光に耀く金色の髪をあっちこっちに跳ねさせたエターニアもぼそりと呟く。
「もぅ、タニア君まで酷いな〜。変なのは自覚してるしぃ」
歩きながらくるりと回ってにぱっと笑う木霊。調子にのって両手を広げてくるくる回って見せた木霊の足が、ふと止まった。
白い雲が太陽を遮り、また暖かい日差しを投げかけている。どこにでもあるような、柔らかな景色。

「ねぇ、夜羽クン、タニア君。 私ね、3人もちゃんと面倒見切れるか、わかんないんだ・・・。ダメマスターだから、また前みたいに突然みんなを放り出しちゃったりするかもしれないし・・・。でも、4人で一緒に旅をしたい。無理にとは言わないから・・・一緒についてきて欲しいの」
誰にも視線を合わせないように、足元の草を見つめながら呟いた言葉。
「はぁ? 何言ってんの木霊。 オレの言葉忘れた? 頼りないからオレは木霊についていくんだよ」
 小さい身体を精一杯大きくそらして木霊を見下ろしたのは夜羽。
「本当なら夜羽と出会えた瞬間にオレの役目は終わってるんだろぅ? それなのにオレの事まで探し出してくれた。また仲間に入れてくれた。 ついていく理由がこれじゃ不足か?」
 少し冷たい青い瞳で木霊を見据えているのはエターニア。
彷徨わせた視線が行き場を無くして二人のピクシーを交互に見つめる。
素敵に無敵な笑みを浮かべる夜羽。
物言わぬ瞳が訴えかけてくるエターニア。
「・・・ごめん。 もう迷わないよ。愛想尽かされるまで精一杯面倒を見るから。」
「んじゃ、オレ1抜けた〜」
「えぇっ!? ちょっと夜羽クンそれはないでしょっ!?」
「あっはっは。 ほらほら、急ごうぜ」
「夜羽クンの意地悪っ。」
「木霊、先に行くぞ」
「あぅ〜、タニア君まで〜。 おっしゃ、んじゃあそこの木の下まで競争。後に野営の準備。優勝者には夕食時優待権。れっつごぉっ☆」
「あーっ、木霊の卑怯者っ! くそっ、タニア行くぞっ。絶対に負けるもんかっ!」
「あ、あぁ・・・」

 冷たい風がぴりぴりと頬を刺す。ゴールの木の根元にたどり着いた3人はそのまま大地へと寝転がった。
 火照った身体を休め、呼吸を整えながらお互いの姿を確認する。自然とこぼれる笑顔。
 木霊が力強く親指を立てると二人のピクシーも同じポーズを返してきた。

「今夜の夕食は〜。 ふわふわタマゴのオムライス♪ 優勝者特権なっ」

 夕食のリクエストに全力を傾けた銀髪のピクシーが誇らしげに宣言した。
 そろそろ春の匂いがする。 とある日の出来事。

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