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小妖精の唄

◆木霊の日記帳 誰かがいる幸せ
「おー、やっぱ忘れてったみたいだね〜」
久しぶりの我が家に戻った木霊は、気がかりだったモノを探し当ててこう呟いた。
それはどこにでもありそうな普通の手帳。
おもむろにぱらぱらと流し読みをしてみる。大半はラクガキ、その間に大切な旅の思い出。
それはページの間に挟まれた四葉のクローバーだったり、鮮やかな鳥の羽だったり。
それはキャラバンでの買い物リストをメモした紙だったり。
それはある日の出来事を記した他愛の無い日記のようなものであったり。
それは埃を被ってはいても、とても棄てられない大事なモノが詰まっていた。

長旅の間に積もった埃を払い落とし、家の中の空気を入れ替えようと窓に近づいた木霊に金色の髪の小妖精が話しかけた。

「なぁ、木霊。 こんなに広かったんだな、この家。」
「ん〜。そうだねぇ、あんまり思ったこと無かったけど、そういえば広いかも。」
「静かだしな」

少々立て付けの悪い窓を力任せに開け放つと、肌を刺すような風が二人の間を通り過ぎていった。

「そうだねぇ。 静かだねぇ・・・」

どんよりと曇った空を眺めながら木霊がぽつりと呟く。窓枠にかけた手の上に金色のピクシーがふわりと着地する。小さな温もり・・・。

「諦めてないだろ、どうせ」
「まぁね、諦めたらこの島出て行ってるよ」
「そこまで思われてるなんて、羨ましいかもな・・・」
「何言ってるのさ、タニア君と生き別れても同じ事するよ」
「オレは繋ぎじゃなかったのか?」
「最初はね、でも気が変わったの。迷惑かもしれないけど、見捨てられるまで諦めないよ」
「何だそれ」

いつも冷静な彼が唇を歪めた。 少し困ったような、不思議な微笑み。
強い風が吹いて、彼の跳ねた金髪と木霊の髪を揺らす。

くしゅんっ。

「やっぱりこの時節におヘソ出してれば寒いか」
「・・・。」
「・・・。 冬服買いに行こうね」

物言いたげな彼の言葉は2回目のくしゃみにかき消された。

「ミルクティーでもいれようか。今夜は暖かい物食べてのんびりしよう?」

窓を閉めて台所へ向かう。返事の代わりに響いたのは3回目のくしゃみだった。

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